2011年4月19日火曜日

[PX] S-SAD について私が知っている二、三の事柄 その2

承前

今回は、shelxD のパラメータと結果の評価についてです。



2. CCall の絶対値で結果を判断してはいけない
3. 最大分解能を変えてみるのは有効である

この2つは互いに関係しあうので、まとめて書いていきます。

shelxD の結果について、「CCall が 40 を越えると解が見つかってる」とか「 30 % を越えるとおそらく正解」とか書かれた資料があります。これらの資料自体の信憑性を云々するつもりは全くありませんが、上記記述のような指標は、およそ一面的であり、盲信するのはよろしくない、と(私個人は)考えています。

※上記リンクした資料は、S-SAD解析をする上で、非常に参考になる資料なので、一読をお勧めします(というか読んでない奴いないでしょw)。

前エントリで示したデータなんかは、BestCCall が 38 くらいですので、1つ目の指標からは漏れていますが、S-SAD には成功しています。

そもそも、CCall の値は何に依存するんでしょうか? ここで、3.とも関係するのですが、ちょっと shelxD に与える最大分解能を変えたデータを見てみましょう。

前エントリで用いた Thumatin 結晶の「on rotation axis with secondary beam correction」スケーリングしたデータの、最大分解能を変えて shelxD と E にかけた結果が以下になります(D の Try数は100、E のcycle数は200に固定)。

最大分解能CCallの最頻値BestCCallContrast(ori)Contrast(inv)
2.212.70615.280.4100.392
2.414.47717.480.4360.380
2.516.29519.270.3890.410
2.617.44224.960.7180.421
2.820.40029.530.5140.452
3.022.52336.590.7300.444
3.225.46938.160.7340.438
3.427.52642.030.7150.437
3.631.33345.880.5710.430
3.833.53847.870.7330.451
4.035.36749.190.5110.436
4.238.51950.440.4790.416
4.441.38547.010.4630.428
4.641.50049.050.4930.418

CCall の値は最大分解能を悪くすると大きくなるようです。これは、誤差の大きな高角の回折が減ることで、相対的に精度が上がってることに由来するものと考えられます。
また、それに伴ってBestCCall も大きくなっていってますが、shelxE でもっともらしい解が得られている(ori と inv のコントラスト差が大きい)のは、最大分解能 3.8 Åまでです。

つまり、「shelxD に与える最大分解能を変えると解が見つかることがあるが、その判断はCCall の絶対値でしてはいけない」ということで、「CCall が間違った解の集団から飛び抜けて高いかどうか」を見なければならない、ということでしょう。

機械的に判断するには、『CCall 最頻値周辺の分布が持つ標準偏差(用語が厳密には正しくありませんがw)と、それに対してBestCCall が何σか』を見るのが1つの手だと思います。

この手法を上記データに適用してみると、

最大分解能CCallの最頻値BestCCallContrast(ori)Contrast(inv)Maxσ(mode)
2.212.70615.280.4100.3922.893
2.414.47717.480.4360.3802.344
2.516.29519.270.3890.4102.459
2.617.44224.960.7180.4216.199
2.820.40029.530.5140.4525.922
3.022.52336.590.7300.44410.370
3.225.46938.160.7340.4388.518
3.427.52642.030.7150.4378.222
3.631.33345.880.5710.4307.812
3.833.53847.870.7330.4514.750
4.035.36749.190.5110.4366.586
4.238.51950.440.4790.4164.557
4.441.38547.010.4630.4282.490
4.641.50049.050.4930.4183.356

と、こんな感じになります。

この指標を shelxD のログから計算する Tcl スクリプトはココからダウンロードできます。

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