今回は、shelxD のパラメータと結果の評価についてです。
2. CCall の絶対値で結果を判断してはいけない
3. 最大分解能を変えてみるのは有効である
この2つは互いに関係しあうので、まとめて書いていきます。
shelxD の結果について、「CCall が 40 を越えると解が見つかってる」とか「 30 % を越えるとおそらく正解」とか書かれた資料があります。これらの資料自体の信憑性を云々するつもりは全くありませんが、上記記述のような指標は、およそ一面的であり、盲信するのはよろしくない、と(私個人は)考えています。
※上記リンクした資料は、S-SAD解析をする上で、非常に参考になる資料なので、一読をお勧めします(というか読んでない奴いないでしょw)。
前エントリで示したデータなんかは、BestCCall が 38 くらいですので、1つ目の指標からは漏れていますが、S-SAD には成功しています。
そもそも、CCall の値は何に依存するんでしょうか? ここで、3.とも関係するのですが、ちょっと shelxD に与える最大分解能を変えたデータを見てみましょう。
前エントリで用いた Thumatin 結晶の「on rotation axis with secondary beam correction」スケーリングしたデータの、最大分解能を変えて shelxD と E にかけた結果が以下になります(D の Try数は100、E のcycle数は200に固定)。
最大分解能 | CCallの最頻値 | BestCCall | Contrast(ori) | Contrast(inv) |
---|---|---|---|---|
2.2 | 12.706 | 15.28 | 0.410 | 0.392 |
2.4 | 14.477 | 17.48 | 0.436 | 0.380 |
2.5 | 16.295 | 19.27 | 0.389 | 0.410 |
2.6 | 17.442 | 24.96 | 0.718 | 0.421 |
2.8 | 20.400 | 29.53 | 0.514 | 0.452 |
3.0 | 22.523 | 36.59 | 0.730 | 0.444 |
3.2 | 25.469 | 38.16 | 0.734 | 0.438 |
3.4 | 27.526 | 42.03 | 0.715 | 0.437 |
3.6 | 31.333 | 45.88 | 0.571 | 0.430 |
3.8 | 33.538 | 47.87 | 0.733 | 0.451 |
4.0 | 35.367 | 49.19 | 0.511 | 0.436 |
4.2 | 38.519 | 50.44 | 0.479 | 0.416 |
4.4 | 41.385 | 47.01 | 0.463 | 0.428 |
4.6 | 41.500 | 49.05 | 0.493 | 0.418 |
CCall の値は最大分解能を悪くすると大きくなるようです。これは、誤差の大きな高角の回折が減ることで、相対的に精度が上がってることに由来するものと考えられます。
また、それに伴ってBestCCall も大きくなっていってますが、shelxE でもっともらしい解が得られている(ori と inv のコントラスト差が大きい)のは、最大分解能 3.8 Åまでです。
つまり、「shelxD に与える最大分解能を変えると解が見つかることがあるが、その判断はCCall の絶対値でしてはいけない」ということで、「CCall が間違った解の集団から飛び抜けて高いかどうか」を見なければならない、ということでしょう。
機械的に判断するには、『CCall 最頻値周辺の分布が持つ標準偏差(用語が厳密には正しくありませんがw)と、それに対してBestCCall が何σか』を見るのが1つの手だと思います。
この手法を上記データに適用してみると、
最大分解能 | CCallの最頻値 | BestCCall | Contrast(ori) | Contrast(inv) | Maxσ(mode) |
---|---|---|---|---|---|
2.2 | 12.706 | 15.28 | 0.410 | 0.392 | 2.893 |
2.4 | 14.477 | 17.48 | 0.436 | 0.380 | 2.344 |
2.5 | 16.295 | 19.27 | 0.389 | 0.410 | 2.459 |
2.6 | 17.442 | 24.96 | 0.718 | 0.421 | 6.199 |
2.8 | 20.400 | 29.53 | 0.514 | 0.452 | 5.922 |
3.0 | 22.523 | 36.59 | 0.730 | 0.444 | 10.370 |
3.2 | 25.469 | 38.16 | 0.734 | 0.438 | 8.518 |
3.4 | 27.526 | 42.03 | 0.715 | 0.437 | 8.222 |
3.6 | 31.333 | 45.88 | 0.571 | 0.430 | 7.812 |
3.8 | 33.538 | 47.87 | 0.733 | 0.451 | 4.750 |
4.0 | 35.367 | 49.19 | 0.511 | 0.436 | 6.586 |
4.2 | 38.519 | 50.44 | 0.479 | 0.416 | 4.557 |
4.4 | 41.385 | 47.01 | 0.463 | 0.428 | 2.490 |
4.6 | 41.500 | 49.05 | 0.493 | 0.418 | 3.356 |
と、こんな感じになります。
この指標を shelxD のログから計算する Tcl スクリプトはココからダウンロードできます。
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